信用金庫のリストラはすぐには進まないと思うが、将来的な経営状況は危険だと思う理由。
- 2018.01.14
- 金融業界の実態
こんにちは。いねだです。
以前に、銀行員が、『3メガ銀大リストラ時代』を考察してみる。という記事を書かせていただき、この記事は私のブログの中で非常によく読まれた。
金融業界は今、変革期にあることは間違いない。
今後5年10年で状況はかなり変わってくるのではないかと思う。
そこで今回は、金融業界の中でも、『信用金庫』をテーマに、『信用金庫のリストラはすぐには進まないと思う理由』と、『経営面では危険な状況だと思う理由』について書いていきたい。
信用金庫のリストラがすぐには進まないと思う理由
「そもそも信用金庫って何?銀行と違うの?」という方は以下の記事を読んでいただきたい。
デジタル化が進んでいない
信用金庫と銀行を比べてみると、信用金庫は事務作業のデジタル化や、ペーパーレス、印鑑レスといった事務手続きの効率化において、圧倒的に出遅れている。
都市銀行を中心とする銀行は、今まで少しずつデジタル化を進め、事務作業の効率化を目指していた中、信用金庫ではそのほとんどが人の手で行われている。
デジタル化が遅れている以上、早い段階で大幅なリストラに踏み切ることには限界がある。
事務処理を行う人員はしばらくの間、必要になってくるだろう。
資金力不足
下位地方銀行、信用金庫の多くは資金力に乏しく、デジタル化に向けた資金を簡単にはまかなえていない。
そのため、今後も著しい勢いでデジタル化が進んでいくことはないだろう。
しばらくは、昭和時代から今までと大きく変わることのない、紙や印鑑中心の、人の手による事務処理が中心で経営が行われていくと思う。
高齢者中心の顧客
信用金庫の中心的な顧客は高齢者である。
高齢者のお客さんの中には、スマホを持っていなくてガラケーを使っている方や、携帯電話自体を持っていない方も多くいる。
このような高齢客に、いきなりタブレットで入力をお願いしても、処理が効率化できない可能性があるし、高齢客は戸惑い、変化に対して文句を言うかもしれない。
信用金庫としては、顧客の中心である高齢客を手放したくないため、結局最後まで高齢客目線でのサービスを廃止するわけにいかないのだ。
世の中がいくらデジタルになろうが、すべての銀行がペーパーレスを進めて人員を最小限に抑えていようが、信用金庫が完全なるペーパーレスになるのはしばらく後になるかもしれない。
信用金庫の将来が危険だと思う理由
信用金庫はデジタル化が進んでいないことや、そもそもデジタル化に充てる資金に乏しいため、昨今話題になっている『銀行員リストラ』の影響はすぐには来ないかもしれない。
しかし、このままだと、リストラ云々よりも、会社の経営としてますます厳しくなってくると私は考えている。
その理由を話したい。
デジタル化が遅れていることによる業務の非効率さ
1日の来店客数は銀行と比べて圧倒的に少ないはずなのに、信用金庫はそれをさばききれていないのが現状である。
窓口での口座開設、入出金や振り込みなどすべてが紙媒体であり、1文字でも書き間違えれば、印鑑がうまく押せなければ最初から書き直し。
また、都市銀行ではほぼ無人で行なわれている自動車ローンやカードローンの申し込みなど、いわゆる消費性のローンにおいても、すべての手続きが紙面の記入により行われており、こちらもまた少しの間違いで1から書き直さなくてはならない。
今までは銀行全体が、変化に乏しかったため、時代遅れで非効率なアナログ作業を続けていても、多少無理すればなんとかなっていた。
しかしこれからは、1つの手続きに非常に時間がかかってしまう信用金庫の事務処理は、デジタル化を進める銀行と比べると、スピード、正確性において、どんどん差が開いていくだろう。
お客さんの立場から考えても、手続きは手軽で早い方が望ましいのは当然だ。
デジタル化を進めた銀行のでのスムーズな手続きと、事務作業のほとんどを紙、そして人力で行っている信用金庫とを比べれば、処理が遅く、時に不備があるような信用金庫の信用はどんどん失われていき、利用する顧客はいなくなっていくのではないだろうか。
そして結果的に、処理スピードの遅さや人員コストの削減が出来ず、収益性も悪化していくと予想している。
人口減、高齢者世代が亡くなったら顧客激減
近年、地方部を中心に人口が減少傾向にある。
人口に対して金融機関が過剰になっており、収益を上げることが難しくなっている現在、地方にある地銀、信金から経営統合、合併といった動きが活発になってきている。
人口減に加えて、信用金庫では高齢者が中心の顧客である。
つまり、信用金庫の預金の多くは、高齢者の預金なのだ。
団塊世代とも呼ばれる高齢者層は、今後10年、20年で亡くなる方も多くなるだろう。
仮に亡くなった場合、息子などが相続という形で資産を継ぐ形になるが、団塊世代の息子のような被相続人にとって、信用金庫よりも地銀、都市銀の方が圧倒的に利便性が高い。
となると、相続された預金の多くは銀行や、今で言えば仮想通貨など、信用金庫から離れていく可能性が高いのだ。
そして信用金庫の預金量激減、大口の融資ができなくなり、経営規模は縮小してくるのではないだろうか。
閉鎖的な企業体質により、現状が認識できていない
信用金庫は営業エリアを限定した地域金融機関である。
地銀以上にエリアが限定されており、会社も、その従業員も、非常に視野が狭い。
日々の非効率な仕事に忙殺されており、都心では何が起きているのか、時代の先端では何が起きているのかなんて全く知らない上司も多々いるのだ。
このような状況の中で、デジタル化による事務作業の効率化がスムーズに進んで行くとは考えにくい。
加えて、金融業界は、今まで変化を嫌い続け、未だに昭和体質が根強く残っている。
これらの相乗効果により、時代の変化を汲み取れないまま変化もできず、時代に遅れて社会から淘汰されていくのではないだろうか。
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最後に:リストラが先か、倒産が先か
いかがだろうか。
『信用金庫の大幅な人員削減はすぐには進まないが、このままだと将来が危うい』という私の考えが、少しでもお分かりいただけただろうか。
リストラの影響は受けなくとも、会社そのものがなくなってしまえば、全員がリストラされたのと同じことである。
むしろ会社が潰れてしまえば、多くの預金者を裏切ってしまうこと、社員は心の準備もできずに路頭に迷う結末となるため、リストラ以上に厳しい状況に置かれるだろう。
低金利には銀行だけでなく、信用金庫も確かに苦しんでいるのだが、仮想通貨、フィンテックといった新興企業に対する脅威はさほど眼中にない様子の信用金庫。
かつては安定している企業の1つだったかもしれないが、時代は変わってしまった。
営業エリアは限定され、視野が狭く、アイデアにも乏しいため、今後も大きな改革は見込めないだろう。
どこかのタイミングでリストラが進むか、それとも経営状況が悪化して存続が危ぶまれていくか、どちらかに陥ると私は考えている。
従業員は日々をなんとなく労働で消耗せず、危機感を持った方が良い。
『終身雇用』という考えはいますぐ捨てるべきだ。
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